相続でもめる原因とは?仲の良い家族でも注意したいポイントを解説

親族が亡くなることにより生じうるトラブルの一つが、「相続におけるもめ事」です。遺産分割協議での話し合いで相続人間の亀裂が入ってしまうと、家族仲の修復が不可能になる恐れもあります。

そこでこの記事では、相続でもめる原因について解説します。併せてもめる家族の特徴や防止法にも触れていますので、相続でのもめたくない方は、ぜひ参考にしてください。

1.相続でもめる6つの原因

まずは、相続でもめる原因として以下の6点を解説していきます。

  • 相続財産が5,000万円以下である
  • 遺言書の内容が不明瞭・不公平である
  • 多額の相続税を負担する必要がある
  • 分割が困難な遺産がある
  • 相続人同士の関係性が悪い
  • 相続人によって被相続人との関係性が違う

一つずつみていきましょう。

1-1.相続財産が5,000万円以下である

相続でもめるのが多い家庭は、相続財産が5,000万円以下とされています。2023年に相続トラブルを起こした約8割の家庭が、遺産額5,000万円以下でした。

参考:司法統計年報|最高裁判所事務総局

つまりごく一般的な家庭でも、争いが生じていることがわかります。相続財産が多いから争いが生じるわけではない点を押さえましょう。

1-2.遺言書の内容が不明瞭・不公平である

遺言書の内容が不明瞭であるケースも、争族が発生する原因の一つです。たとえば「私の財産の管理は長男に任せる」といった記載が該当します。

「任せる」という言葉は、相続させるかどうかが判別しづらい表現です。あいまいな遺言書は、効力を巡ってもめ事が発生しやすいでしょう。

また被相続人のお気に入りの子どもに対し、多額の財産を贈与させる遺言もトラブルの原因になります。要件を満たす相続人には遺留分侵害請求権が認められるため、権利行使を検討するとよいでしょう。

関連記事:相続で遺留分がもらえないときはどうする?具体的な対処法を解説

1-3.多額の相続税を負担する必要がある

相続税の基礎控除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」で算定される額です。実際に負担する割合は、2016年〜2022年で10%未満となっています。

参考:相続税がかかった人はどれくらいいる?|公益財団法人 生命保険文化センター

納税の対象となる家庭は比較的少ないものの、多額の財産を引き継ぐ世帯は高額な相続税を負担しないといけません。金銭以外の財産(不動産など)にも相続税がかかるため、誰がどのように負担するかでもめることも考えられます。

1-4.分割が困難な遺産がある

分割が困難な遺産があるときも、もめ事が発生しやすいため注意しましょう。主な具体例が、不動産を相続したケースです。

遺言書や遺産分割協議で取り決めがない場合、不動産も法定相続分に基づいて相続されます。しかし実生活では分割して使用するのが難しく、結果的に誰かが独りで住み着いて争いが生じてしまいます。

1-5.相続人同士の関係性が悪い

相続人同士の関係性が悪いのも、相続でもめてしまう要因として挙げられます。配偶者は必ず相続人となり、その他の親族の優先順位は次のとおりです。

  • 第一順位:子
  • 第二順位:直系尊属
  • 第三順位:兄弟姉妹

第一順位の子には、離婚して別れた前妻との子も含まれます。このように関係性が複雑であると、トラブルに発展しやすいので注意が必要です。

1-6.相続人によって被相続人との関係性が違う

民法に定められている相続人の法定相続分は、以下のとおりです。

相続人法定相続分
配偶者と子(第一順位)配偶者1/2、子1/2
配偶者と直系尊属(第二順位)配偶者2/3、直系尊属1/3
配偶者と兄弟姉妹(第三順位)配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

しかし特定の子どもに対し、被相続人が多めに生前贈与している可能性もあります。結果的に一部の相続人が多くの財産を取得するケースも多く、トラブルに発展してしまいます。

2.相続でもめる家族の特徴10選

相続でもめるのは、家族との関係に起因するケースも少なくありません。ここからは、トラブルが生じやすい家族の特徴を10個に分けて解説していきます。

2-1.遺産のほとんどを実家が占めている

まず相続でもめる原因として考えられるのが、遺産のほとんどを実家(不動産)が占めているケースです。先程も説明したように、不動産は金銭とは異なり簡単に分配できるわけではありません。

一人が不動産を相続し、残りの相続人に相当分の金銭を支払う方法(代償分割)もありますが、資産に余裕があるのが条件です。こうした理由から、不動産の相続は困難を極めます。

2-2.遺産に不動産が複数含まれている

被相続人が土地を2つ以上持っている場合も、相続でトラブルを起こしかねません。特に土地の場合、面積のみならず整備状況によっても価値が著しく変わるためです。

被相続人は土地を平等に渡したつもりでも、実際の価格は数千万円ほど異なるケースもあります。価値の低いほうを相続した側は、不公平さを感じやすくなるでしょう。

2-3.被相続人に内縁の妻または夫がいる

内縁の妻や夫は、法定相続人には数えられません。しかし被相続人の生前贈与や遺贈により、財産の一部もしくは全部が譲渡されることも考えられます。法定相続人側からすれば、本来もらえるはずの財産を相続できないのは不満に感じるでしょう。 

2-4.被相続人に認知していない子がいる

認知されていない子も、本来は相続権を有しません。ただし民法には「遺言認知」の制度があり、被相続人の死後に「子」として法定相続人にするのが可能です。遺言認知をすれば、元々法定相続人だった者から反感を買う可能性が高まります。

2-5.存在を知らない相続人がいた

場合によっては前妻の子など、自身と関わりのない人物も相続人となることがあります。相続人を確認する中で、被相続人が過去に不倫していた事実が発覚するかもしれません。

ほとんど接点のない人物の書類も必要となるため、手続きが前に進まずストレスも抱えやすくなります。

2-6.家族間の仲が悪い

自分の兄弟に音信不通の者がいるなど、家族間の仲が悪いところも一定数あるでしょう。遺産分割協議で久々に集まったところ、財産を巡ってもめるケースも少なくありません。弁護士に事態の収拾を依頼しなければ、いつまで経っても協議が進まない恐れもあります。

2-7.特定の相続人に財産管理を任せている

特定の相続人に財産管理を任せると、資産隠しに遭う危険性が高まります。資産隠しとは財産の一部を隠し、他の相続人に分配する額を故意に減らす行為です。こうした行為をする者に対しては、不当利得返還請求等で対抗する必要があります。

2-8.特定の相続人が多額の財産を生前贈与されている

特定の相続人が、被相続人から多額の財産を生前贈与されているケースももめる原因の一つです。

本来生前贈与(特別受益)を受けた人は、持ち戻し計算で遺産相続が減らされます。そして持ち戻し計算後に、差し引く額を巡るトラブルが起こりやすいので注意しましょう。

また「生前贈与ではなく、お金を出して買い取った」と主張されることもあります。

2-9.被相続人の生前に遺産について口約束をした相続人がいる

生前贈与は諾成契約であり、口約束による方法も可能です。しかし録音などの証拠を残さなければ、契約が実際にあったかを証明できなくなります。したがって現実的には、契約書のない贈与を成立させるのは難しいでしょう。

また、相続についての口約束も、生前贈与同様に証明となるものがなければ成立しません。

2-10.相続人間で介護の負担が異なる

相続人間で介護の負担が異なることも、相続のトラブルを招きやすくなります。その理由は、寄与分が関わってくるためです。寄与分とは、被相続人の財産維持に貢献した相続人が、多めに財産を取得できる制度を指します。

仮に他の相続人が寄与分を認めたとしても、割合を巡ってもめることも少なくありません。割合が確定しなければ、遺産分割協議も前に進まないでしょう。

3.相続でもめるのを防止する方法

仲の良い家族でも、相続を巡って関係性が悪くなる場合も珍しくありません。相続でのもめるのを防止する方法として、以下の6つを解説していきます。

  • 被相続人の生前から話し合いを進めておく
  • 遺言書を作成する
  • 家族信託・後見制度を利用する
  • 財産目録を作成する
  • 相続財産を入念に管理する
  • プロの弁護士を交えて話し合いをする

詳しく解説します。

3-1.被相続人の生前から話し合いを進めておく

相続でもめないようにするには、被相続人の生前に話し合いを進めておきましょう。被相続人の意思を尊重しつつ、自分たちの意見も直接主張するのをおすすめします。

家族間のコミュニケーションを増やすだけでも、話し合いができるチャンスを生みます。切り出しにくい話題ではあるものの、終活への取り組みは少しずつスタートさせたほうが賢明です。

3-2.遺言書を作成する

相続におけるもめ事を防ぐうえで、遺言書も有効な方法の一つです。被相続人にも遺言書のメリットを伝えるべく、前もって家族間で話し合いましょう。

遺言書にも種類がありますが、公証人に作成してもらう公正証書遺言書が特におすすめです。ただし被相続人に対して遺言を強要する行為は、民法上でも禁止されているので注意してください。

3-3.家族信託・後見制度を利用する

家族信託や後見制度も、相続時のトラブルを防ぐ方法として挙げられます。

家族信託は、信頼の置ける家族に財産の処分を任せる制度です。後見制度は重度の認知症を抱えている者に対し、後見人を付ける制度を指します。

これらのメリットは、被相続人が認知症になっても財産を守れる点です。被相続人との話し合いの中で、家族信託や後見制度の利用も検討してください。

3-4.財産目録を作成する

財産目録とは、一定期間のプラスの財産とマイナスの財産をまとめたものです。正確な情報に基づいて作成すれば、被相続人の財産状況が客観的にも明らかになります。

ただし、あとから多額の借金が判明した場合は、相続人間でトラブルが起こりかねません。財産目録の作成は、弁護士や税理士といった有識者に依頼するのをおすすめします。

関連記事:相続後に借金が発覚したときの対処法とは?相続放棄はできる?

3-5.相続財産を入念に管理する

相続でもめる要因として、家族の誰かが勝手に財産を処分するパターンも考えられます。相続財産はその他の資産と区別して、誰もが手を付けられないように管理しなければなりません。

さらに相続財産を管理するうえでは、節税対策を講じることも大切です。行政の制度も上手く使いつつ、少しでも相続税を抑えられるように対策しましょう。

3-6.プロの弁護士を交えて話し合いをする

感情的に言い争っても、相続におけるもめ事は大きくなるばかりです。話し合いをまとめるには、客観的かつ論理的な提案ができる弁護士を交えましょう。

相続に強い弁護士であれば、数々の事例を参考に解決法を提案してくれます。相続手続きが不安な人は、複数の法律事務所へ相談してみてください。

4.まとめ

相続でもめる原因および家族の特徴は、記事で紹介したとおりさまざまなケースが考えられます。元々は良好な関係であっても、相続をきっかけに不仲になることも珍しくありません。

これから先も仲の良い状態を保つには、被相続人が亡くなる前に少しずつ話し合いの場を設けましょう。家族全員で「終活」の必要性を理解することが、トラブルを防ぐうえで重要です。

弁護士法人池袋吉田総合法律事務所では、相続に関する無料相談を受け付けています。相続でお困りの方は、ぜひ当事務所までご相談ください。

keyboard_arrow_up

0367091710 問い合わせバナー 無料法律相談について